Prendre corps II

for soprano and recorders (2023/24)

Instrumentation

Soprano (doubling Soprano recorder)

Alto recorder (doubling Soprano recorder)

Duration

9’30”

Premiere

13th July 2023, Paris (France), Maison du Japon / Cité Internationale Universitaire de Paris, Kanae Mizobuchi (Sop.) & Kiichi Suganuma (Rec.)

楽器編成

ソプラノ(ソプラノ・リコーダー持ち替え)

アルト・リコーダー(ソプラノ・リコーダー持ち替え)

演奏所要時間

9分30秒

初演

2023年7月13日、パリ国際学生都市日本館
《青柿将大作品個展》、溝淵加奈枝(Sop.)&菅沼起一(Rec.)

Program Note (JA)
 本作は、私にとって《脱=独白》(2021-22)に続く、ルーマニア出身のシュルレアリスト詩人ゲラシム・ルカの詩に基づく二作目の声楽作品である。今回テクストとして採用したルカの詩《Prendre corps》は、機械的かつ強迫的な愛をテーマとし、単語の多義性や動詞を名詞・形容詞へと置換する言葉遊び、「私(Je)」と「君(Tu)」、そして「私たち(Nous)」の絶えざる流動性によって特徴づけられている。

 この詩が描くアイデンティティの曖昧さや複数性は、本作におけるソプラノとリコーダーの関係性――両者の役割は何度も交錯する――に顕著に反映されている。ソプラノとリコーダーの二重奏は、時に二声や複数のリコーダーによる楽曲へと姿を変え、演奏者の身体性は常に揺らぎながら、一定の形に収まることを拒み続けるのである。

 タイトル《Prendre corps》は、フランス語で「(計画などが)具体化する」という意味を持つ一方で、「身体をつかむ」や「肉体を得る」といった字義的な意味をも彷彿とさせる。本作の前半において、分解されたリコーダーが楽曲の進行とともに復元されていく過程は、まさに「楽器がそのパーツ(=肉体)を獲得し、形を成す」様を体現しており、それはリコーダーという楽器の完全性を改めて浮き彫りにするであろう。