for prepared violoncello (2015/16)
Commission
Kei Yamazawa
Instrumentation
Prepared Violoncello
Duration
8′
Premiere
26th December 2015, Tokyo (Japan), Japan Evangelical Lutheran Koishikawa Church, Kei Yamazawa (Vc.)
Premiere of Revised Version
5th July 2016, Tokyo (Japan), Suginami Public Hall, Yui Hosoi (Vc.)
Performance History
- 16th July 2016, Tokyo (Japan), Wako University, Kei Yamazawa (Vc.)
- 27th October 2018, Tokyo (Japan), Shin-Marunouchi Building, Kazuhito Shinohara (Vc.)
委嘱
山澤慧
楽器編成
プリペアド・チェロ
演奏所要時間
8分
初演
2015年12月26日、日本福音ルーテル小石川教会
《マインドツリー2015 –無伴奏チェロリサイタル– 20世紀以降の作品を集めて》、山澤慧(Vc.)
改訂初演
2016年7月5日、杉並公会堂小ホール、《NODUS vol.1 –失われた響きを求めて–》、細井唯(Vc.)
再演
- 2016年7月16日、和光大学学生ホール、《特殊音樂祭2016》、山澤慧(Vc.)
- 2018年10月27日、新丸ビル3階アトリウム、《藝大アーツイン丸の内2018》、篠原和仁(Vc.)
Program Note (JA)
2015年、山澤慧氏の委嘱により作曲。
タイトルの【Anthropométrie(人体測定)】は、顔料を直接身体に塗ったモデルをキャンバスに押し付けたり引きずったりすることで、その肉体の躍動を可視的な痕跡として平面上に定着させ、言わば人体を「生ける絵筆」として用いた、フランスの画家イヴ・クライン(Yves Klein, 1928-1962)の同名の作品シリーズから採られています。彼が来日した際に見た魚拓や力士の手拓、そして原爆の影のエピソードに衝撃を受けて制作に至ったとされるこの作品群でも、モノクロニズムを代表するクラインがある時期から固執していた「青色(=空とその無限性)」が用いられています。
本作は彼のこうした思考や手法に触発されたもので、雅楽やチャクラにおいて青色と呼応する音高を軸としています。聴覚的にも視覚的にも上行・下行運動を偏執的に繰り返すモノトーンなリズムと、そこへ時折挿入される「補色」としての弓のスウィング音といった限定的な素材が、展開も収斂もせずに連綿と続き、“置き去り”にされる身振りや余韻、周期的に鳴らされるゴングを模した最低音や轍を辿るかのような様々なタップ音等が「痕跡」として淡々と刻印されていきます。
イヴ・クラインの青を味わうとき、われわれは外なる青を注視しつつ、感性へのその反響に耳を澄ませている。
佐々木健一著「日本的感性 触覚とずらしの構造」(中公新書、2010年)より