for shakuhachi, saxophone and piano (2025-26)
Commission
Duo NéMeu
Instrumentation
- Shakuhachi in D (requires an oval magnet and a glass)
- Tenor Saxophone (doubling Soprano Saxophone; requires an oval magnet and a glass)
- Piano (requires an oval magnet, a credit card, a bicycle inner tube, Patafix, five magnetic discs and adhesive tape)
Duration
18’00”
World Premiere
2 March 2026, Tokyo (Japan), Tokyo Bunka Kaikan Recital Hall
Shozan Hasegawa and Duo NéMeu (Miho Kiyokawa & Nanami Okuda)
Performance History
6 March 2026, Paris (France), Le Pavillon de la Sirène
Shozan Hasegawa and Duo NéMeu (Miho Kiyokawa & Nanami Okuda)
*French Premiere
委嘱
デュオ・ネム
楽器編成
- 尺八(一尺八寸管:+楕円型磁石、グラス)
- テナーサクソフォン(ソプラノサクソフォン持ち替え:+楕円型磁石、グラス)
- ピアノ(+楕円型磁石、クレジットカード、自転車用タイヤチューブ、パタフィックス、円盤型磁石5枚、粘着テープ)
演奏所要時間
18分
初演
2026年3月2日
東京文化会館小ホール
《Duo NéMeu meets 長谷川将山 〜伝統の継続的な昇華〜》
長谷川将山(尺八)
Duo NéMeu:清川美穂(Sax.)&奥田ななみ(Pno.)
再演
2026年3月6日
Le Pavillon de la Sirène(フランス、パリ)
《Duo NéMeu meets Shozan Hasegawa》
長谷川将山(尺八)
Duo NéMeu:清川美穂(Sax.)&奥田ななみ(Pno.)
*フランス初演
Programme Note (JA)
ホロビオントとは、ある生物と、それに共生するすべての微生物(細菌・ウイルス・菌類など)を合わせたひとつの生態的単位を指す概念である。たとえば、ヒトという「個」を単独の存在として捉えるのではなく、宿主と、そこに暮らす無数の(目に見えない)微生物との複合体としての「個」と考えるのである。
尺八、サクソフォン、ピアノという、材質、発音機構、文化圏、歴史のいずれもが大きく異なる、いわば異種格闘技のような編成において、三人一組の「個」は最初から与えられた単位ではない。それはむしろ、「メタ楽器」として、複数の関係が一時的に結晶化した結果として立ち現れるものである。一方で「複数」とは、無秩序な集合を意味するのではなく、常に新たな「個」を生成しうる潜在性を備えた状態として捉えられる。
冒頭に提示され、姿を少しずつ変えながら何度も回帰する、多層的な高速ジグザグ運動は、ピアノと、さらに二人の管楽器奏者がそのピアノに寄生するかのように寄り添うことで生成される「メタ楽器」による主要楽想(=宿主)である。曲は、即興的な性格を持つこの主要楽想と、それに内包される多様な要素――点の集合、ジグザグなフィギュア、異なる周期性の重ね合わせなど――を適宜切り出してしばしばスローモーションで拡大観察するかのような以下のいくつかの副次的楽想(=微生物群)とのあいだを往還しながら進行していく。
- 点描による6声のヴザ・カノン(相互補完的な特殊なリズム・カノン)
- ジグザグなグリッサンドを伴う尺八のコロコロを含む、各声部速度の異なる3~4声のヘテロフォニックなカノン
- 常に4:5:6の速度比による3声の山型あるいは谷型のカノン
- 2本の管楽器のあいだでトレモロやオーバーブロー、メリやカリによって生じる痙攣的な揺動運動
- ジグザグなフィギュアを奏する尺八のカラカラを中心とした、脆い音響体の対比
ホロビオントの概念に基づき、本作では、慣習的/非慣習的な身振りのあいだで揺れ動きながら、「自己とは何か」「他者との境界はどこにあるのか」という問いを、音像および形式を通して再定義することを試みた。多様な性格をもつ複数の断片的な楽想が、滑らかにあるいは強引に、並列的にあるいは多層的に、時空間のなかで接続されることで、ひとつの音楽的生態系が形成されていく。